「いらっしゃーい!」
教室の中、やけくそ気味な声が響く。このクラスの小森晶人の声だ。
――二日ある学園祭の一日目。
1‐Bでは自分たちの教室を使用して、
ジェスチャーゲームを出し物としていた。
幾つかの出題に回答し、
その正解数によって景品が貰える、というものである。
準備期間にも部活であまり参加出来ない者も、
当日は楽しめるようにと考えられ出された案がこれだったのだ。
ちょうど客足が減り、小森は教室の端で壁に寄りかかり
だるそうに息を吐いた。すぐそこに立つ加納を不満げな目で見上げる。
加納は興味なさげに、同じこの時間を担当している
もう一方のグループが動き回っているのを眺めていた。
「加納、お前な」
「何」
「お前もやれよな」
四人前後に分けられたグループで
時間を割り振って担当をしているのだが。
彼らのグループは男女二人ずつの四人組、
女子はおとなしい性格のため無理強いは出来ず、
小森がジェスチャー係をしていて。
加納はむすっとした表情の小森をちらりとも見遣ることなく答えた。
「嫌だね」
「俺一人にやらせる気かよ!?」
「だってオレそんなキャラじゃないし」
「俺もだっての!!」
言い合い始める二人を早苗と綾菜は苦笑しながら見守っている。
ジェスチャーは相手によって難易度を変えることが
出来た方が面白いだろうということで、
多種多様なものが用意されていた。
見ればもう一方のグループは交互にジェスチャー係を
やっているというのに、
こちらは小森ばかりが飛んだり跳ねたり。
「先輩来たらどうすんだよ〜」
「張り切って頑張れば?」
「テメェ……!」
あくまでも自分がする気はないようで、加納はあくびを噛み殺しさえしている。
小森は軽く少女たちが景品を整理しているのを見てから声を低めた。
「大体なぁ、お前は牧野と仲いいみたいだけど、俺と井上はそうじゃねーんだし、誰だよメンバー決めたの」
「オレが知るわけないし」
部活が同じで親しい加納と小森が組み、早苗と組んだ綾菜と加納が互いに他の男女より仲がいいからと、なんとなく一緒になった。
それだけの話ではあるのだが。
CLAP*