「イトコだっけ、仲いいんだな」
笹木があぐらを崩し寝転がる。
芝生というよりは雑草と呼ぶ方が近いかもしれないが、
緑の上に仰向けになるのは
季節もあってちょっと気持ちよさそうだ。
茶色い頭が早苗を向く。
「船橋のこと好きなのか?」
「……はい? 何、突然?」
「んー、単純なる好奇心?」
に、と軽い笑みを唇に乗せた笹木に、早苗は微笑み返す。
「それはどういう意味で?」
「恋愛的感情?」
「なら好きじゃないよ。私はナオを好きだけど、家族みたいな感じで、だから」
どうして笹木がそんなことを聞いてくるのかがわからない。
早苗はくすくすと笑ってしまう。
「そういう風に見てたとしたらナオだって迷惑でしょ」
「そうかぁ?」
笹木は不思議そうな目で早苗を見上げてくる。
船橋は優しいから好きだ。
でもだからこそそんな風には見られない。
自分なんかが好きになっても、という思いが昔からあった。
「ふーん……?」
よくわからないといった顔ながら、一応は納得したような声を発する笹木は、続けて口を開く。
「それじゃあ岡崎は?」
「岡崎くん?」
「そ、最近あいつ、やたら井上のこと構ってるっつか絡んでるから」
今度は岡崎のこと。いったい何がしたいのだろうと
笹木の言動に首を捻る。
早苗はグラウンドから元気に届く彼の声を聞き取って、そうだなぁと考える。
まだよくは知らないが、いつも笑顔で、元気で、明るくて、楽しくて――。
「……憧れ」
――そう、憧れだ。
彼の名前を聞いて浮かぶのは、明るい笑顔ばかり。
教室をグラウンドを駆け回り、どこにいても目につく。
「いつも明るくて元気で、勉強は出来なくても運動は出来て、」
誰に対しても変わらない態度で、早苗にも声を掛けてくれた。
関わり合うよりも前から。
入学して一番最初に挨拶をしてくれたのも、彼だった。
「みんなの人気者みたいな感じ」
――自分とは、まるで反対。
「憧れる」
眩しいものでも見るように、グラウンドに向けられた早苗の目は細められた。
彼女には太陽のようにも思えるほど、岡崎の姿は輝いて見える。
CLAP*