再び帰路についた早苗たちは、
一定の間隔で並ぶ街灯に照らされた道を走る。
道を行くほどに人数は減っていき、船橋と別れ、市村と別れ、最後には二人になって。
近いとは言っていたが、本当にそうらしい。
一緒に残っていたのは岡崎だった。
当たり前のように早苗の通学路に付き合って、
岡崎の自転車は早苗の自転車と隣り合って走る。
本来の帰路はきっと、途中から分かれているはずだろうに。
そうして普段の下校よりやたらと時間がかかりながらも、
無事マンションに到着した。
「うお、ここー!?」
「うん、ここ」
簡単な住所と住居がマンションであることは話していたが、
近所でありながらここまでは来たことがなかったようで
岡崎は口を開けてそびえ立つそれを見上げた。
「へー。キレーなとこだな!」
「そうだね、中も綺麗だけど外も綺麗だよね」
同じように早苗も軽く見上げてみる。
まだ比較的新しいことがわかる、
ライトに浮かび上がった明るい茶色の壁。
建てられてからまだ片手で数えられるかどうか
という年数しか経っていないと聞いた気がする。
「中も見てみたいな〜」
わくわく期待に満ちたように見える岡崎の瞳に戸惑う。
他意はないのだろうが、早苗には何とも答えられない。
だから言葉を発しないまま自転車置場へ続く小さな門に
自転車を寄せ、思わぬことに楽しかった
今日を思い返して早苗は微笑んだ。
「わざわざ送ってくれてありがとう。それじゃあ」
「また明日な!」
「また、明日」
「ばいば〜い!」
屈託ない笑顔を残して走りだす自転車を、視線が追っていく。
地元を離れこっちに来てからというもの、
出来た友人は部活をしていて、自分は帰宅部で。
誰かとこうやって手を振りあって別れたことなんて初めてだったから、心臓が小さく弾んでいた。
「……ばいばい」
CLAP*