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 偶然にも同じ一年生の中、 大半が揃って自転車通学だったようで、 幾つもの自転車が走る。 ほとんどが学校指定のシルバーカラーばかりだ。
 ぞろぞろと帰路を進むその一団の中に、本人の望む望まないは関係なく、早苗も紛れ込まされていた。

 わいわいと話す声は止まない。 野球や、テレビや、教師や噂などについての話が、 代わる代わる出てきては他愛もない会話が 絶えず続いていく。

 賑やかに道を走る。だが 早苗の居心地は決していいとは言えなかった。
 そもそも男子は苦手なのだ。いや、基本的に他人と関わるのが得意でないと言うべきか。 自分は何をしているのだろうという気持ちになってしまう。

 時折船橋が心配そうな視線を送ってくるのが感じられたが、 友人たちの手前か声は掛けてこなかった。 話しかけられてもこんな状況では あちこちから意識を向けられそうで反応に困るだろうから、 早苗にとってもそれはありがたい。

「そういやサッカー部、マネージャー戻ってきたってよ」

 少年たちの話を早苗はただ聞こえるままに耳に入れていく。
 噂話に疎い彼女は聞いたことがなかったのだが、 サッカー部では先月にマネージャーが 突然辞めるという事件があったらしい。

「マジで?」
「つかどこ情報よ」
「あいつだよ、あいつ。辞めてった篠山。サッカー部入ったみたいでさ」

 今話している彼の名前を早苗は知らない。 クラスメートのことは何とか大体覚えたものの、 他クラスとなると名前も顔もほとんどがわからない。 顔覚えも名前覚えも特別悪いわけではないが、 いいわけでもないのだ。

 聞いていると、そのマネージャーが復帰したのは つい先日のことらしい。
 他の部のことまでよく知っているものだと感心する。

 途中コンビニに差し掛かる道に入り 家まであと半分かと早苗が思った時、 前を走る少年たちの自転車の速度が緩やかに落ちだした。
 思わぬことに半ば反射的に船橋を見遣ると、 苦笑を浮かべて顎で前方を示した。

 ――コンビニに寄って帰る。

 そういう意味なのだと理解すると、自転車は駐車場に乗り上げて止まった。
 辺りが薄暗くなっているために 店の明かりが少し目に眩しい。
 停められていく自転車が並ぶ。

 早苗はこのまままっすぐに帰りたかったが そういう訳にもいかず、彼らから幾らか距離をとるように 自転車を端の方に寄せて停めた。
 慣れた様子で店内へと入っていく彼らに、 これはいつものことなのだと理解する。

 変に生真面目というか、学校では金銭や余分なものを 持ち歩かない早苗は買い物なんて出来るはずがなく、 自転車に寄り添ってみんなが出てくるのを待った。
 わいわいがやがやと、主にドリンクやアイスを物色しているのがガラスを透して見えている。

 今は日が暮れて気温が下がったとはいえ、 長時間太陽の下にいたので 彼らが手にしている物を見ていると どうにも喉に渇きを覚える。
 見ているだけ辛いかと、早苗はぼんやり空を見上げた。






CLAP*